マグネシウムは、糖尿病など生活習慣病の予防・改善に欠かせないミネラルです。工業分野ではパソコンなどに利用されていますが、さらに燃料電池や水資源開発などにも活用が期待され、注目を集めています。 糖尿病とマグネシウムの関係を明らかにした東京慈恵会医科大学教授・横田邦信先生と、《ミスター・マグネシウム》こと弊社代表取締役・宮本隆が、マグネシウムの可能性について話し合いました。

【その1】
マグネシウムの効用を知った意外なきっかけとは…

宮本 横田先生がマグネシウムに注目したきっかけは、どんなことだったのでしょうか。

横田 慈恵医大を卒業後、国立東京第二病院(現・国立病院機構東京医療センター)で研修医をしていた当時、副院長の本田正節先生が臨床で酸化マグネシウムをいろいろな患者さんにさじ加減で処方されていたんです。多めに使えば緩下剤になり、少量なら制酸剤になります。そのほか、マグネシウム製剤が不整脈に効くなど、さまざまな効果があるので《マグネシウムは面白い》と興味をもったのがきっかけです。

宮本 当時、マグネシウムは注目されていたのですか。

横田 全く注目されていませんでした。戦後、GHQや厚生省(現・厚生労働省)がカルシウムと鉄分が不足しているから積極的に摂取するようにと推奨していましたが、マグネシウムについては無関心でした。欧米でもマグネシウムはカルシウムの影に隠れた、忘れられたミネラル《forgottenミネラル》と呼ばれています。

宮本 私たち機械業界でも、機械に使う材料は主にアルミニウムなので、マグネシウムの研究をしている先生が少なく、マグネシウムの材料開発も進んでいません。

横田 そんな中で、高純度のマグネシウムを使った洗濯補助剤『洗たくマグちゃん』を開発されたきっかけは何だったのですか。

宮本 油で汚れた手を、水に浸けたマグネシウムの白い粉で洗うとキレイになるのは、機械屋の日常的経験で知っていたんです。でも、「洗たくマグちゃん」は、マグネシウムを使った製品化を考えるうちに、ああでもない、こうでもないと回り道しているうちにできたんです(笑)。

横田 マグネシウムを洗濯に使うという発想が画期的ですね。

宮本 アップルのスティーブ・ジョブズやテスラ・モーターズのイーロン・マスクについての本を書かれている経営コンサルタントの竹内一正さんに会った時、「木からリンゴが落ちるのは誰でも見ていたけれど、万有引力の法則を発見したのはニュートンだけだった。マグネシウムで洗濯して、洗濯物だけでなく洗濯槽や排水をキレイにして、酸性化した海もキレイにするのを発見したのは宮本隆だ」と言われ、自信を持ってもいいのかな、と(笑)。そういう意味では、10年以上前に横田先生が提唱された、マグネシウム不足が糖尿病を引き起こす原因の一つだという仮説も、画期的だったのでは?

横田 今でも、糖尿病は食の欧米化と肥満や運動不足が大きな要因となって発症するというのが定説です。でも、臨床現場では肥満で糖尿病の患者さんも多いですが、肥満ではないのに糖尿病の患者さんも多いことに疑問を持っていました。食の欧米化で肥満が増えたと言われていますが、調べてみると平均エネルギー摂取量は1980年代半ばから減っているのに糖尿病は増えています。

宮本 辻褄が合いませんね。

横田 そうなんです。そこで、私が注目したのがマグネシウムです。実は私の母方の曽祖父が塩田を営んでいたこともあり、塩に興味がありました。海水を塩田で蒸発させて作る粗塩(あらじお)にはマグネシウムなどのミネラルが豊富に含まれています。しかし、1972年に塩田が廃止され、イオン交換樹脂膜法という化学工業的な方法になり、ほとんどミネラルがない精製塩だけが売られるようになりました。私にはピーンとくるものがあったのです。同時期にマグネシウムの多い大麦・雑穀なども食卓から激減しました。日本人がマグネシウム不足になる時期と、糖尿病が増え始めた時期が一致していたんです。

宮本 横田先生の仮説を裏付ける研究が相次ぎ、WHOでもマグネシウム不足が糖尿病発症と関係すると認められたんですね。弊社が開発した『洗たくマグちゃん』もおかげさまでヒット商品になっています。10年前にはお互いに業界の異端児だったわけですが(笑)、今はマグネシウムが健康や暮らしに役立つことを証明できて嬉しいですね。

【その2】
日本人は肥満でなくても糖尿病になりやすい!?

宮本 糖尿病=肥満というイメージがありますが、日本人には「太っていないのに糖尿病」の患者さんが多くいて、欧米人の場合は「太っていても糖尿病ではない」人が多いと聞きましたが、その理由は何ですか。

横田 糖尿病はインスリンの分泌低下やインスリンの効きの悪い状態によって、高血糖状態が続く病気です。日本人は数千年にわたって農耕民族でしたので、遺伝的にインスリンをガンガン分泌できません。食事の欧米化によるマグネシウム不足でインスリンの効きが悪くなっても、それを代償するためのインスリン分泌ができないので、糖尿病になりやすいんです。狩猟民族の欧米人はインスリンの分泌能力が高く、マグネシウム不足でインスリンの効きが悪くなっても、インスリンをガンガン分泌できるので、糖尿病になりにくいということがあるのです。

宮本 遺伝的体質と言われると、悲観的になりますね。

横田 いいえ、マグネシウムを十分に摂取することで、糖尿病を予防できることがわかってきました。「食事からのマグネシウム不足が糖尿病の発症と進展に関係している」という仮説を証明するため、2003年に軽症の糖尿病の患者さんに協力いただいて、天然の濃縮マグネシウム(MAG21)が入った飲料水を1か月飲んでもらう臨床研究を行いました。インスリン抵抗性(効きの悪さ)の改善、高血圧の改善、中性脂肪の値の低下が示され、仮説を裏付けることができました。

宮本 その後も研究は進んでいるのですね。

横田 はい。食事から摂るマグネシウムが少ないと糖尿病発症リスクが高いこと。摂取量が多いと10~20%糖尿病の発症リスクが低くなること。野菜や果物の食物繊維ではなく、全粒穀物に含まれるマグネシウムをしっかり摂ると最大35%糖尿病の発症リスクが減ること。このようなことが国内外の研究者によって論文化されました。

宮本 糖尿病以外の生活習慣病にもマグネシウムは関係しているのですか。

横田 マグネシウム不足によって脂質代謝異常を引き起こしたり、血管が収縮して高血圧を起こしやすくなったり、狭心症を悪化させたりします。メタボリックシンドロームにもなりやすいんです。

宮本 マグネシウムをしっかり摂ることが重要なんですね。

横田 マグネシウムの重要性が認識されたのは最近のことです。循環器内科の医師や栄養士さんが、マグネシウム摂取の重要性を患者さんをはじめ一般の人たちに広めてほしいと願っています。